〜縛りプレイ論〜その1

 

ゲームなどの縛りプレイ(制限プレイ)の作り方を中心に、やや抽象的な話を書いています。


-縛りプレイとは-

 縛りプレイを言葉で表すなら、「何らかの縛り(制限)を設けて、通常より困難な状態で目的を達成しようとすること」という感じでしょう。難しいプレイをすることでプレイヤーや観衆が普段と違う楽しみ方をでき、新しい経験・発見になるというメリットがあります。プレイヤーにとってのやりこみやプレイの上達にもつながります。また達成した時に得られる感動や評価は通常プレイに比べて大きくなります。同じゲームなどをより長くプレイできるのも利点です。逆に言うとこれらのメリットが見込めない場合や、とにかく目的を達成したいだけの場合は縛りプレイをする意味がありません。元々十分に難しいもの・制約が多すぎるもの・通常プレイにすら慣れていないものも、縛りプレイの対象には不向きと思われます。

 ※「目的を達成したいだけ」の例:商売・受験・プロの競技・病気の治療など様々ですが、要するに結果が最優先のもの。

 ところで、難しくする縛りプレイ・制限プレイがあれば、反対に易しくする「緩めプレイ」・「緩和プレイ」もあっていいのかもしれません。難しすぎて面白くない時に、ほどよく制限を解いてプレイすることが考えられます。ただゲームにしても競技にしても通常のルールが簡単で一般向けなことが多く、プレイに不慣れな場合を除いて実際に行われるケースは少なそうです。

 ※例:バレーボールでラリーが続かないので、ボールに3回でなく5回触れられるようにする行為。


-縛りプレイの七要件-

 縛りプレイを作る上で、その内容やルールに求められるであろう要素を挙げていきます。SFCの「風来のシレン」を例に出します。

 面白さ:プレイしていて(あるいはプレイを見ていて)興味深く思えることが大事です。通常プレイの延長として難しいのではなく、経験したことのない状況になって悩むぐらいに難しいのが理想です。ルールに合わせて作戦を考え、普通はしないような動きや判断をこなしていくという、縛りプレイの醍醐味を体感できるものを作りましょう。また単純作業が続いたり毎回同じ展開になったりするのは、退屈という意味で避けたいところです。

 合理性:始めに書いた縛りプレイのメリットが、コストとリスクに対して大きくないと割に合いません。コストとはプレイにかかる時間や費用で、リスクとは健康状態・人間関係などの悪化や、プレイの目的を果たせなかった時に負う実害のことです。ゲームや小規模な遊び・趣味・競技などではリスクが小さそうです。縛りプレイに観衆がいる場合は、その人たちも楽しめる分メリットが大きくなりますが、逆に批判されたりするリスクも想定するべきでしょう。

 可能性:プレイの目的を達成できる見込みがあることです。縛りがきつすぎて手も足も出ないようではだめで、難しさと可能性のバランスが求められます。目的の種類によって考え方が変わってきます。

 ※シレンでの例1:「フェイの最終問題の99階に到達する」という目的なら、ダンジョンを進むのが難しいほど可能性は低くなります。このように一定の何かを達成したい場合は、難易度を上げすぎない意識が必要です。

 ※シレンでの例2:「フェイの最終問題をできるだけ深く潜る」という目的なら、進みにくくてもその縛りでの限界を追求できるので、可能性は保持されます。99階に到達するとそれより先に進めず、正確には目的を果たせずに終わってしまうと考えれば、むしろ到達できなくなるような高い難易度が必要と言えます。無限に潜れる「掛軸裏の洞窟」や「食神のほこら」ならそこまでは不要です。

 ※一般例:相手に勝つことが目的の対戦では、普通は自分にも相手にも同じ制限が課されるため、縛っても可能性は大して変わりません。よほどのハンデがない限りこの要素は気にしなくていいでしょう。

 確実性:それぞれのルール自体は、ほぼ確実に(運にあまり依存せずに)従えるものでなければなりません。実力や注意力が足らずにルール違反になるのは仕方ないですが、少し運が悪いだけで自動的に違反になってしまっては困ります。特にプレイヤーが意図せずに起こり得る現象は、禁止する時に配慮が求められます。そもそも違反していないかどうかを、プレイヤーが確実に判定できることが大前提になります。

 ※シレンでの例1:「キグニ族に攻撃させない」・「いやしウサギに回復させない」・「トドに落ちているアイテムを盗ませない」といったルールは危険です。開幕時など避けようのない場面が十分想定できます。

 ※シレンでの例2:「掘られた通路に入らない」のは簡単に思えますが、地形によっては正規の通路と判別しにくいのが問題です。

 的確さ:縛りに期待している効果と、実際に表れる効果が過不足なく一致することです。制限したいことが完全に防げていなかったり、反対に余計なことまで制限されていたりしないか、プレイヤーの視点で確認しましょう。事前にすべてを把握するのは難しくて、プレイを重ねるうちに1つずつ改善されていく要素だと思います。

 ※シレンでの例1:壺を一切使えなくするために「壺に入れない、壺を押さない,割らない,吸い出さない」というルールにしても、やりすごしの壺をモンスターに投げる行為が防げません。「割らない」を「投げない」にすると、転び石などで割って使える壺がいくつか出てきます。結局「割らない」と「投げない」を両方入れるのが的確と言えます。

 ※シレンでの例2:アイテムを20個しか持てなくするために「壺に入れない」というルールにすると、アイテムを保管できない底抜け・倉庫・やりすごしの壺も縛られてしまいます。「底抜けと倉庫以外の壺にアイテムを入れない」の方が的確です。

 明確さ:ルールを読んでどこまでがセーフでどこからがアウト(違反)なのか、はっきり理解できる必要があります。制限したいと思った行動・状態などをそのままルールにするのではなく、より具体的な表現で言い換えるようにします。また判断に迷いそうな様々なケースを想像して、グレーゾーンをなくしていきます。

 ※シレンでの例:「トド狩りをしない」というルールだけでは、トドを何匹倒すと違反なのか、トドがモンスターに倒された場合はどうなるのか、などがわからず明確さに欠けます。

 簡潔さ:なるべく少なくて短い、シンプルなルールを目指しましょう。複雑なルールを頭に入れながらプレイするのは大変で、違反を起こしたり見落としたりしやすく、観衆もついていけなくなりそうです。上に挙げた要素と両立させるのは簡単ではないですが、1つのルールに複数の効果を持たせられれば、簡潔で内容も伴ったものになると思います。


-縛りプレイの作り方-

 ここでは作り方の大まかな手順を書きます。それぞれの詳細は「その2」以降で説明します。

 @対象と目的を決める:まず縛りプレイの舞台と、その中でのプレイヤーの目的を定めます。たいていは通常プレイと同じものになりますが、縛りプレイに向いているのかは確かめておきましょう。

 A縛り要素を書き並べる:通常プレイから想像して、禁止したり義務付けたりすると面白くなりそうな行為などを挙げます。組み合わせて様々な縛りを作れるように、細かく分けて書く方がいいです。

 B縛り要素に条件を付ける:Aで挙げた「縛り要素」の中から今回使う要素を選びます。それが常に従い続けることが難しい場合や、余計な効果が出てしまう場合は、補正するための「条件」を加えます。

 C縛り要素を組み合わせる:Bと並行する形で、縛り要素をいくつか合わせて1つの「縛り」にします。メインとなる要素を中心に考えるのか、単にいろいろな要素を足していくのかは自由です。

 D縛りを明文化する:できた縛りを文章にして「ルール」を作ります。誰にでもわかりやすい文章にしましょう。

 Eプレイと修正を繰り返す:実際にプレイして狙い通りの内容になっているかを確認し、だめならBとCに戻って修正します。改めて「縛りプレイの七要件」もチェックしておきます。

 F縛りの意味を示す:縛りプレイが完成したら、その全体的な方向性や各ルールに期待している効果を書き表すといいです。作成者の意図を知ることで、他のプレイヤーが修正点などについて意見を出しやすくなります。


[その1]

[その2]

[その3]