〜縛りプレイ論〜その2

 


-対象と目的を決める-

縛りプレイの対象

 遊びや趣味から仕事・学業・生活・人生全体まで、考え方次第ではあらゆるものが対象になり得ます。ただ「その1」の始めに書いたように、結果が最優先に求められるものは縛りプレイに適しません。自分だけが結果を求めているなら自分の意思で縛ってもいいのですが、仲間がいる場合は結果が出なかった時に責任が発生します。それ以前に1人だけ制限を付けてプレイ(行動)していれば冷たい目で見られるでしょう。このあたりは「合理性」に欠けるとも言えます。リスクの小ささを考えると、やはりゲームやスポーツなどの遊びが最も縛りプレイに向いています。

 あと、対象を広くしすぎると目的や縛り要素の選択肢が多くなって大変なので、ある程度範囲を絞るべきだと思います。例えばシレンでは、ゲーム全体でなく1つのダンジョンを対象にするのが無難です。もちろん良いアイディアさえあれば、ゲーム全体だろうと人生全体だろうと縛ることはできます。

 プレイヤー同士の対戦はやや特殊な対象です。お互いに同じ制限を設けるだけでなく、一部のプレイヤーにだけ設けたりそれぞれ違う制限を設けたりして、ハンデを作る変則プレイもあり得ます。平等な縛りプレイなら、勝利という結果だけが求められるプロの競技でも実施できそうです。ハンデ戦は遊びの対戦で行うのが基本で、勝利よりも全員が楽しむのが目的として大きいでしょう。

 

縛りプレイの目的

 基本的に通常プレイ(普段の行い)の目的と変わりません。大きく分けるなら「達成」・「追求」・「不定」の3種類になるでしょう。1つのはっきりした目標を実現するのが「達成」で、何かを手に入れたり完成させたり、何らかの地点・段階・数値に到達したり、対戦で相手に勝ったりすることが挙げられます。ゲームのクリア・山の登頂・試験の合格・就職・結婚…とにかく区切りがあるものすべてがこれになります(縛りプレイに向くかどうかは別問題)。

 明確でない目標や限界に向かっていくのが「追求」で、ある数値・性質・感覚をできるだけ高めたり、または新しい発見をしたりすることが該当します。利益を高める商売・速さなどを高める陸上競技・美しさを高める芸術・楽しさを高める遊び といった例があります。ゲームではタイムアタック・スコアアタックのようなやり込みが関係してきます。

 「不定」は目的を特に意識していない場合です。適当に時間をつぶす・単に面白いのでやる・なんとなくやるべきだと感じる・やれと命じられる…そんな訳で深く考えずにプレイすることは多々あるでしょう。普通に生活していれば食事や睡眠なども含まれるはずです。目的意識もなく制限プレイをするのは不自然な気がしますが、縛り自体を無意識に作ってしまうケースも考えられます。


-縛り要素を書き並べる-

禁止型と義務型

 縛りプレイをしたい対象とおおよその目的が決まったら、縛りの材料となる「縛り要素」をリストアップします。「禁止型」と「義務型」の2通りのやり方があります。簡単なのは禁止型で、通常プレイでやりがちな行動・なりがちな状態・起こりがちな現象を挙げ、それを禁止したプレイを想像する方法です。少しでも「面白さ」を感じたら(難しそう・インパクトがある・どんな風になるのかと思ったりしたら)その行動・状態・現象をリストに加えます。

 義務型は反対に、通常プレイでやらない(やる必要がない)行動・なりにくい状態・起こりにくい現象を考えて、それを義務付けられたプレイを思い浮かべます。想像力が求められる上に、候補の数自体は禁止型より圧倒的に多く、その中から面白そうな要素を見つけるのも困難でしょう。禁止型と義務型それぞれのリストを合体させるのが理想ですが、禁止型だけでもしっかりした縛りをまとめられるとは思います。

 

リスト作成のポイント

 後で必要に応じて条件付けや要素の組み合わせをするので、単独では十分に面白くないと思える要素や、「合理性」・「可能性」・「確実性」に不安がある要素(運に大きく影響される状態・現象など)でも、よほど極端でない限りこの段階では残しておきます。またリストに加える際には行動などをできるだけ細かく表し、具体的な条件は省いた形にします。あくまで材料を集めるだけの作業で、まだ縛りの詳しい内容は意識しなくていいです。

 ※シレンでの例1:「肉を使う」という行動は、「食べる」・「投げ当てる」・「売る」などの動作や肉の種類によって細分化します。

 ※シレンでの例2:いつも26階であかりの巻物を使っているため、それを禁止しようと思った場合でも階数の条件は付けず、「あかりの巻物を読む」ことをリストに入れます。

 出した要素は種類別に整理しましょう。まずは「プレイヤーの行動」・「プレイヤーの状態」・「他の状態」・「他の現象」の4つに分けるといいです。それから行動・状態・現象を内容ごとに分類します。参考(というより備忘録)として、僕なりのSFCシレンでの縛り要素を掲載してみました。要素が多くなりそうな「こばみ谷」は対象から外しています。どの要素に「面白さ」を感じるかはプレイヤーの熟練度や通常プレイのスタイル、あるいは制限プレイに求めているスタイルによって変わるので、1つの例と見なしてください。

 

内部要素と外部要素

 上記のように通常プレイから連想して挙げられる縛り要素は、プレイ対象(ゲームやスポーツなど)の中での行動・状態・現象についての制限事項です。このような対象の内容に関する「内部要素」に対して、プレイヤーが置かれる環境など、対象の周囲に存在する「外部要素」も考えられます。ゲームでの外部要素の例としては、音を消す・画面の向きを変えたり一部を隠す・手を使わない・寝ないで長時間プレイする…他にもいろいろあるでしょう。スポーツでは天候・観衆の様子・コートの整備状況といった要素がありますが、プレイヤーの服装もそうかもしれません。使う道具の種類までくると内部要素になると思います。


-縛り要素に条件を付ける-

条件付けとは

 リストアップした縛り要素は、そのままの形ではプレイ中ずっと、どんな時でも守っていなければならないという意味になっています。これは「簡潔さ」または「明確さ」の面で優れていて、形を変えないに越したことはないです。ただそれ以上に「可能性」・「確実性」・「的確さ」などが不十分な場合は、縛り要素に効果の範囲を限定するような「条件」を付けて補正する必要があります。特に義務型の要素は行動・状態・現象を維持することなので、条件付けが重要です。

 ここからやっと縛りの内容を考える段階に入ります。実際に縛りプレイに取り入れたい要素を決めて、それをうまく補正できる条件を探します。現実としては次の、要素を組み合わせる作業と並行して条件を詰めるのがメインになります。他の要素との組み合わせ次第で最適な条件が変わる場合もあります。少なくとも「面白さ」や「合理性」の不足に対する補正は後回しにしてもいいでしょう。

 

条件の種類

 一般的によく使われそうな条件の種類を、シレンでの例とともに紹介します。

 時間:制限を適用する時間帯を指定します。例:「1時間経過後は」アイテムを拾わない,「毎階15分以内に」次階へ進む

 場所:同様に場所を指定します。例:「10階以降は」「通路では」通常攻撃をしない,「10の倍数の階は」飢餓状態でいる

 回数:禁止事項の許容回数や、義務を果たす回数を定めます。例:「3回以上」復活しない,「5回以上」モンスターハウスを作る

 対象:ある対象にのみ制限を与えます。例:「ぴーたん系に」矢を撃ち当てない,「ギタンを」保存の壺に入れない,「斜め方向に」歩行しない

 手段:行動・状態・現象を起こす手段を禁止または指定します。例:「草や種を飲む以外の方法で」満腹度を上げない,「大部屋の巻物を読んで」泥棒しない

 行動:特定の行動をする時に制限を課します。例:「階段を降りる時は」盾を装備しない,「肉を食べる時は」混乱状態でいる

 状態:特定の状態である時に制限を課します。例:「レベル20以上の時は」おにぎり類を食べない,「HP最大の時は」歩行しない

 数値:様々な数値の条件を要素に加えます。例:「強さ30以上の」盾を装備しない,「1ターンに1000以上の」経験値を得ない

 詳細:細かく考えれば条件のパターンは無数にあります。例:「モンスターが撃った」矢を拾わない,「シレンに隣接した」モンスターは必ず倒す

 罰則:制限に違反しても、別の罰則に従えば許されるという形式です。例:壺を拾わない、拾ったら次のターンに置く,落とし穴で次階へ進む、階段で進むならアイテムを1個捨てる

 

内部条件と外部条件

 縛り要素と同じように条件も、プレイ対象の「内部」に存在するか「外部」に存在するかで二分できます。例えばSFCシレンでは、ゲーム中に表示されない実時間を限定するものは外部条件と言えます。時間をターン数に置き換えるなら内部条件になります。縛り要素との組み合わせは自由で、内部条件を外部要素に付けることも、その反対も可能です。

 ※内部条件→外部要素の例:偶数階ではコントローラーを逆に持つ

 ※外部条件→内部要素の例:あくびが出たら武器をすべて捨てる


[その1]

[その2]

[その3]